相場格言第18条|盛況の極端に走る時
盛況の極端に走る時は何人も、いまだ昂進するものと思惟するは免れざるの感情なれば、この時において注意すべし。
物に盛衰あるは天地間の通則にして、これを免がるること能はざればなり。
- 出典・引用
- 柄沢照覚著「期米株式相場極意秘蔵書」116-117/176
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柄沢照覚著「期米株式相場極意秘蔵書」116-117/176
諸般物価の高低するは、必ずやこれを刺激するの材料ありて然るものなり。
而して株式の高低の原動力のおもなるものは、国家経済の整理の方針如何と、その当時の金融の繁閑に基づくものなることは、言を待たず。
また貿易の盛衰輸出入の過不足等も、関係すること鮮少ならず、国産の第一位を占める生糸、茶等が高価にして、輸出多額なるときは、商業界の勢い隆盛にして最も活動はげしく起る。
また五穀の豊穣も、幾分か間接に影響する所たり、而してまた不振の原因はすべてこの反対にして、輸入品多く国産の主要品すなわち生糸茶等の価格低落して、貨物は各地に停滞し、金融は引き締まる時に際会せば、自然人気の消沈は免れざるなり。
しかのみならず天災累起に遭い五穀の凶作に囂囂(ごうごう)して、輸入を仰ぐが如き場合には、たちまち金融閉塞して大いに悲境に陥るものなり。
その他工業会も衰頽し銀行社会は警戒を厳にし、定期市場にも、株式を売り繋ぐ等の時至るとせんか、場面は総売りとなりて買うものなく、自然に暴落の場合もしばしばこれありとす。
その他刺激のもっとも甚だしきは、外交の障害粉紜は実にその感じ早くして甚だしきものなり。
而してこれ等の刺激材料は、期米市場と反対にして、相互市場には絶対的反対の結果を生ずるものなり、然りといえども株式市場に昂進の好材料を為すことは、期米市場にもまた盛況をあたえることなしとも限らず。
期米市場が無事に苦しむが如き時は、株式市場に好材料多くして、相場界に変動あるの時とす。
然りといえどもかくの如きは年中打ち続くものにあらず、物に盛衰あるは天地間の通則にして、これを免がるること能はざればなり。
故に株式市場に売買を試むものは、社会総ての事情をよく観察し、以て売買の仕掛をなすべし。
もっとも株式の売買も定期市場という、名称を冠する以上は、いかに安全なる株式といえども、相場性質の軌道は免れざるものなるを以て、陽に走りて暴騰して止まる処を知らざるの裏面は、俄然大暴落を来たすものなり。
而して盛況の極端に走る時は何人も、いまだ昂進するものと思惟するは免れざるの感情なれば、この時において注意すべし。
また未だ安いとか尚ほ一段低落あるべしなどとの、念慮制し難き場合は、すでにその極端なるを以て、何れも一歩を退き徐々に趨勢を観察して、手仕舞いするかまたは、方針を転ずるの様なすべし。
これ株式売買の秘訣のみならず、生糸、綿、塩、その他一般相場界に業を営むものの忘るべからざるの事と知るべし。