相場格言第217条|何が故に狼狽するや

何が故に狼狽するや。
真実を外にして外事に迷ひ、積り方を知らずして法を立てることをせず。
早く取りたぐらんとせしが故なり。

出典・引用
野城久吉著「商機」514-515/573
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格言
八木

野城久吉著「商機」514-515/573

問)
我聞く、相場ことをするものは十人が九人迄損をして退き、只だ一人のみ益して退き、其の一人も亦た彼の九人の中なりと。
其の理如何。
答)
大抵似たり、何故に損人多きや。
曰く、其の心中たとへば一両の資本でも百両迄にせんと思ひ、欲深にするが故に、少々掬ひ殖めても、此の目腐金何んの足しにもならぬなど思ひ、尚々気高振りになって、米を増仕掛けするが故に、遂には一文なしになって止むものなり。
又た商内の仕様を知らず、浮から浮からとして、ここでも踏み、その処でも踏み、何んで損をしたことやら、何んで踏んだことやら、無茶羅九茶羅で、その上強いこと負け惜しみを云ふて後悔する。
右九人の部なり。
夫れ何が故に狼狽するや。
真実を外にして外事に迷ひ、積り方を知らずして法を立てることをせず。
早く取りたぐらんとせしが故なり。
夫れ積り方をつつまやかにして、その法立を精しくし、心を静めて慮りをよくし、損を覚悟して行ふ時は、当たらずと雖も遠からじ。
夫れかくの如きものは、十人のその一人なり。
嗚呼、心を用いるものの尠(すくな)きことや。

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