相場格言第173条|務むべき事を務めず

其の務むべき事を務めず、其の謀るべきを謀らずして、其の過ちをするは、穴を掘りて其の中に自ら陥るに等し。
何ぞ遂ぐる所在らんや。

出典・引用
松蔭迂叟著「期米株式相場明鑑」32-33/115
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八木

松蔭迂叟著「期米株式相場明鑑」32-33/115

それ思惑を立てて売買をするに、あたること十に二三、違うことは十に七八なり。
是によりて工夫をして、難平の一理を得たり。
そもそも難平の理たる、始めを慎んで米を少くし、終わりを慮って推すを強くす、是の如きのみ。
難平の裏をいう時は、利乗せなり。
難平は損を防いで行くものなり。
利を乗せて行く事は易し、損を防いで行くことは難し。
もし損を埋めて防ぐ能はざる時は、大損をせねばならぬことなり。
其の務むべき事を務めず、其の謀るべきを謀らずして、其の過ちをすることは、穴を掘りて其の中に自ら陥るに等し。
又た其の恐るべきを恐れず、其の防ぐべきを防がずして、大に損する者は、闇夜に提灯を持たず、長海に船を用いず、軍陣に謀なく、唯だ血気の勇を恃んで行はんとするが如し。
何ぞ遂ぐる所在らんや。
吾が難平法は、是等の人々の不知を助けんとするのみ。
それ難平をして末を遂げざるは、多く其の始めより難平をする覚悟にあらずして、唯だ其の負け惜しみに難平をするが故なり。
難平をする者は始めより其の心当を致し始め米を少しに仕掛け、其の末を助くるなり。
其の始めを少しにするは、遠きに致す所以なり。
其の終わりを多くするは相場の復りを待つ所以なり。
市に逆らふことは変物に交わる所以なり。
武士として今ひと息辛抱して戦ふ時は敵弱って高名すべきに、其の身臆病愚者にして、逃げ尻構えて弱身を見られ、遂に敵に追ひ散らされ後悔することは十に八九有るなり、是れ即ち命を惜しみ心定まらざるが故なり。
又た難平をする者も是と似たり、今ひとしめくひしばって居るならば仕果る者を、口惜しや吾れ米を仕廻ふと直ぐに本へ復て居る。
意地の悪い市じゃ吾れ米を取りに来た杯と述懐をして止みぬ。
又た皆な心の定まらざる咎なり。
ここを見越してその始めに於いて、心を定めてかかるなり。

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